AM10:00。会場は、受付を済ませた参加者で潮が満ちるようなにぎわいに包まれていた。「感動フォトメモリー2009」に並んだ、教育ファーム活動の劇的瞬間に目を細める人。「指導者必見! 使える応援教材」を熱心にチェックする人。ホール内を取り囲む、各協力団体の成果物を写真に収める人。
雰囲気はまるで、開演前のコンサート会場。そう、これから全国の教育ファーム活動で確かめあったことを伝え、食農体験の[種を播く人]たちのライブが始まるのだ。
ここではその【体験ブース】のようすを報告する。
![]() 「感動フォトメモリー2009」を眺める |
![]() 「指導者必見! 使える応援教材」を熱心にチェック |
![]() ベテラン農家の指導で、縄ないにチャレンジ |
![]() ワラと空き缶、空き瓶を使った一輪挿しをその場で指南 |
参加者が熱闘していたのは、King of農村工芸、ワラ細工体験のコーナー。
東京の17校にバケツ稲栽培の出前授業を実施する、『なぐも原・結の里』(新潟県・十日町市)では、ドリンク瓶や空き缶とワラで簡単にできる一輪挿し教えてくれた。「バケツ稲1杯からお茶碗1杯分の米と、一輪挿しが作れるなんてステキでしょ」と、事務局の臼井隆さん。
本格的な縄ないを手ほどきしていたのは、『静原コスモトピアの会』(京都府・京都市)の西村明信さん。しかし体験者の縄はなぜかヨレヨレになるばかり。
女性スタッフが「わら1本ずつを縒っている方向と、2本を縒っている方向は逆向きなんですよ」と説明。「はあ〜」と深い深い感嘆をもらすチャレンジャーたちだった。
●関連HP(外部リンク):京都市立静原小学校
![]() 2リットルのペットボトルを使って、苗の植え付けを体験(やまぐち里山環境プロジェクト) |
ペットボトルでも稲は育つ! 「3本育てれば、おむすび1コができるんですよ」と、『やまぐち里山環境プロジェクト』(山口県・山口市)の代表、嘉村則男さん。
幼稚園児たちに伝えてきた、ペットボトル稲作を楽しく成功させるためのポイントが、ブースいっぱいに展示された。希望者には、ボトルに土を詰め、持ち帰ってもらう工夫も。
●関連HP(外部リンク):やまぐち里山環境プロジェクト
![]() 田んぼの生き物オンパレード |
●生き物の豊かさにびっくり!
テーブルにはフナやドジョウをはじめ、実物と標本の生き物オンパレード。水田がこんなにもたくさんの生命のすみかだったなんて! と驚く来場者たち。
「オーストラリア原産の“コモチカワツボ”ではないですか。カワニナのかわりに、ホタルがこれを食べると、光らなくなるんです。つまり異性を呼び寄せられない、繁殖できなくなります」と、答えるのは『NPO法人田んぼ』(宮城県・大崎市)の女性スタッフだ。
さらに、「田んぼは人と自然をつなぐ場所。生き物に水辺を提供し、彼らの力で米を作ってもらうという考え方の実践が、『ふゆみずたんぼ(冬期湛水農法)』なんですよ」と熱く語っていた。
![]() 磯焼け現象を報告する中学生たち |
●冬みず田んぼと磯焼け調査
『NPO法人田んぼ』が提唱する「ふゆみずたんぼ」で米作りを実践しているのが、お隣のブースの気仙沼市立大谷中学校(宮城県・気仙沼市)。
農地が海のすぐ近くにあることから、海の砂漠化といわれる磯焼け現象を観察し、肥料過多や農薬による負荷を与えない米作りを実践している。
2年生の女子生徒が見学者に見せているのは、大谷の海から生かしたまま運んできたウニ。「週一回、漁船で磯に出てウニを割り、どれくらい中身が充実しているか調査しています」とのこと。
その解説を熱心に聞くのは、青森県の高校の先生で、「いまは東京の民間企業に出向しています。いずれ青森の高校に戻ることになっているので、どのような農業体験教育ができるか、とても参考になりました」と声をはずませた。
●関連HP(外部リンク):NPO法人田んぼ
![]() リエゾン・キッチンの学生が熱心に説明 |
![]() かわいいミソ・デ・スマイルに大喜び |
「Miso de Smile(ミソ・デ・スマイル)を作ってみませんか?」白衣がイケてる調理師のタマゴたちが、来場者に呼びかける。「ミソ・デ・スマイル」とは、明成高等学校調理科リエゾン・キッチン(宮城県・仙台市)の学生たちが開発した、味噌汁キット。地元の小学生たちと大豆を栽培し、伝統の仙台味噌に加工する体験の中で生まれた体験グッズだ。
参加者は、スプーンの先に盛りつけてある味噌(顔)に、麩(目玉)や干しワカメ(髪)で顔を描くのに奮闘。管理栄養士を目指している女子大学生4人組もチャレンジし、「午前中のパネルディスカッションの『農を語れない栄養士ではダメ』という提言が、うん、インパクトありました」とうなづくことしきり。さらに隣のテーブルで、チーズ入り味噌汁を味わい「ほっ」と和みのため息を漏らしていた。
●関連HP(外部リンク):明成高等学校調理科リエゾンキッチン
![]() 若い方にどんどん移住してもらいたい、と西村文子さん |
![]() 麹の配合で味噌の味が変わります、と森川美保さん |
愛知県からは2つの農場が、グリーンライフを展示。『西村自然農園』(愛知県・豊田市)は、センスが光る衣食住の創作物がいっぱい。西村文子さん、芳正さん夫妻は「農村には、空き家と休耕地がどんどん増えています。若い方にどんどん移住してもらいたい」とアピール。
「場所は?」「家は自分で建てたのですか?」と専門学校の女子生徒から興味津々、質問がよせられ、「夏休みはぜひ遊びに来て!」と、西村さんに誘われた彼女たちは、力強くうなづいていた。
『季の野の台所』(愛知県・美浜町)は、自家製の玄米甘酒で、来場者をウェルカム。一口飲んで「香ばしい〜」と驚きの声が上がる。また自家製味噌を3種類並べ、その3種がどんな麹の配合比で作られているか当てる超難関クイズも用意された。麹は、豆麹、米麹など5種類。味噌を味わっては、首をかしげる人であふれた。
そのようすに、「ふだん食べているものの由来を知ってもらうきっかけになればいいのですが」と代表の森川美保さんはほがらかに笑った。
●関連HP(外部リンク):西村自然農園
●関連HP(外部リンク):季の野の台所
文責:事務局・渡辺征治、写真:渡辺征治、児玉記幸